外壁と窓枠の全てに白御影石を使った石蔵。石材の総切数は約1,000切(=約70t)。石工事だけでおよそ3ヶ月を要したこの石蔵は、施主様の”こだわり”と、石材店の技術力・デザイン力が結集された石工事事例です。〔設計/施工:山形県東根市-細矢石材店 様〕
設計・デザインを手掛けた細矢石材店-先代社長は、若い頃から常にカメラ片手にデザイン収集をしており、その中からヒントを得てオリジナルデザインを考案。また、自社工場で地蔵や灯篭の創作活動に没頭するなど、勉強家だったといいます。この石蔵のデザインも、天童市や庄内に残る古い石蔵を実際に見に行き、日々研究を重ね、菊をあしらったオリジナルの窓枠もデザインされたそうです。瓦葺きの屋根、内部の木造構造、入口に取り付けられた銅板製の屋根や、特注のステンレス製-開閉扉など、施主様のこだわりも随所に見ることができます。
「お墓だけが石屋の仕事ではない。一歩先を見据えて、他の石屋がやっていないこと、できないことにも取り組んでいかないと、これからは生き残っていけない」というのが、先代社長の教え。以前に取り組んだ神社(狛犬)の移転工事や、寺院の鐘楼堂の改修工事などの経験が、石蔵の設計/施工にも大変役立ったといいます。
これまでの復元工事などの経験は、同様の工事を請け負った際の参考となるだけに留まりません。施主様に”喜ばれる仕事”は、互いの信頼関係を深め、さらに記憶に残されることで広告の役割も担い、また次の仕事へと活かされていく。そんな―良い循環を生んでいる― といえます。先代社長の教えを継ぐ現社長-細矢道明氏は、お墓以外の石屋の仕事に対する取り組み方について
「一番大切なのは『前向きに取り組もうとする気持ち』だと思っています。苦労も多いのですが、その分だけ、終わった後で喜んでもらえると”良い思い出”にもなります」
と話してくださいました。その言葉は、先代社長の教えが今でも生きている何よりの証拠であり、この石蔵が施主様のこだわりだけではなく、細矢石材店様の仕事に対する想いや、先代社長の人柄までをも感じさせる”喜ばれる仕事(=良い思い出)”の1つとして、多くの人々の心に刻まれているのだと思います。
◎山形県東根市 細矢石材店 ⇒ 地図